週刊少年ジャンプ 2019年50号
約束のネバーランド 第157話 the world is mine より引用
(C)白井カイウ/出水ぽすか
157話では、ソンジュの教育係のような鬼が、彼に原初信仰の原理を教えたことが判明。
更に、王家によって彼が追放されていることがわかった。
そして、その先生と似た鬼が、実は12巻に登場している。
あのお方や、七つの壁のマーク、そして竜の目……。
農園を認めたあのお方という、原初信仰とは真逆の思想を認めた存在を祀っている寺に、彼はいた。
更に言うなら、あのお方を祀っているにしては随分廃れていたり、竜の目の遺跡も今や原型を留めていない。
……というわけで、鬼の世界における信仰の形が、イマイチはっきりとしない。
結局、原初信仰は約束によって、どのように廃れていったのか?
信仰が歪んだ結果、今はどうなっているのか?
あのお方と原初信仰の関係とは、どうなっているのか?
久々に原初信仰の描写が来て、いよいよあのお方や原初信仰などの鬼の世界の信仰について分かりそうなので考えていく。
ヒントになりそうな情報
まずは、鬼の世界の宗教に関係の有りそうな情報について、わかっていることをまとめていく。
ヒントになりそうな情報は以下の通り。
1.原初信仰とは
2.約束によって原初信仰は成立しなくなった
3.約束にはあのお方が関わっている
4.現在は儀祭などで、あのお方が祀られている
5.クヴィティダラの遺跡には、全てを見通す竜がいたが、廃れている
6.竜の目と七つの壁、あのお方を祀った寺がある
それぞれ簡単に見ていく。
1.原初信仰とは

約束のネバーランド 第51話 B06-32① より引用
(C)白井カイウ/出水ぽすか
原初信仰とは、「神が作った命を狩猟という形でいただくなら、神への反逆にはあたらない」というもの。
逆に言えば、神が作っていない命を食べることは許されないという宗教。
ソンジュたち信仰していて、かつて彼の先生であった鬼から教えられたものである。
2.約束によって原初信仰は成立しなくなった
しかし、ソンジュいわく「約束によって信仰が歪んだ」。
これはすなわち、農園を作るという約束である。人間を狩ることができなくなり、鬼が人間を作る。
そうなれば、原初信仰を信仰する鬼は人間を食べることができなくなり、絶滅する。
ということは、実質原初信仰を信じる鬼というのは存在しなくなるのである。当然、原初信仰を信じるものはいなくなるだろう。
そして、彼に原初信仰を説いた先生は、王家によって追放されている。
ここから、「約束」を推し進めるため、宗教に対する王家の干渉もあったものと考えられる。
3.約束にはあのお方が関わっている

週刊少年ジャンプ 2019年33号
約束のネバーランド 第142話 1000年前の”約束”② より引用
(C)白井カイウ/出水ぽすか
そして、原初信仰を揺るがした、人間と鬼の「お互いを狩らず、人間は農園で養殖する」という約束。
これにはあのお方も深く関わっている。
あのお方は、七つの壁でのもう1つの約束で、農園を作るというこの約束に加担している。
具体的には、「世界を2つに分ける」代わりに、ごほうびとして「その年に農園で実った一番良い人肉」を要求しているのだ。
これはつまり、あのお方が原初信仰と対立する存在であると言える。
農園を容認し、自らもそれを食べようとしているのだから。
4.現在は儀祭などで、あのお方が祀られている
結果、現在は「あのお方」が鬼の頂点として祀られている。
農園にできた最上物は彼に捧げられ、農園の職員は彼に祈りを捧げている。
全てを欲しがる女王レグラヴァリマすら最上物は口にできず、彼を祀り上げていた。
5.クヴィティダラの遺跡には、全てを見通す竜がいたが、廃れている
また、別の宗教的な要素として、クヴィティダラの竜の目がある。
これは、昔はクヴィティダラには竜がいて、その目は何でも見通す力があった、というもの。
クヴィティダラにはペンダントと同様の模様があって、過去にはそこで祈りを捧げる鬼がいた。
また、ペンダントを持ったエマのみが、昼と夜の光景やヒントを見ている。
しかし、現在では完全に廃れてしまっている。
竜の目の遺跡の形は崩れ、そこを訪れる鬼はいない。
6.竜の目と七つの壁、あのお方を祀った寺がある
そして、最後にエマたちが訪れた鬼の街にある寺。
ここには、あのお方らしき御神体、竜の目、そして七つの壁のマークがある。
街の喧騒とは真逆で、ソンジュの先生らしき鬼以外は誰もいない寂れ具合だった。
このあたりをふまえて、原初信仰やあのお方、鬼の世界における宗教について考えていく。
鬼の世界の宗教――原初信仰やあのお方、竜の目の関係を考察
鬼の世界の宗教について挙げてきたが、いくつか疑問がある。
竜の目はともかく、あのお方と七つの壁が祀られている寺にも関わらず、寂れすぎてはいないだろうか?
あのお方は女王ですら従う鬼。なのに祀られている物は古く、誰も寺にはいない。
そしてもう1つ。寺にいた鬼がソンジュの先生だとすると、おかしくはないだろうか?
あのお方は、彼の信じていた、原初信仰を否定した。そんな存在を祀った場所に、彼はいたいと思うだろうか?
更に言うなら。あのお方を祀っているのだとすると、既に廃れた竜の目とともにあるのはおかしくないだろうか?
現在否定されているものと、現在祀られている存在がともにある。これは、何故なのか?
様々な疑問があるので、これらについて説明がつく説を考えてみた。
全ては”あのお方”の力だった。”あのお方”への解釈を、王家が歪めた
今回の描写を見て考えたのは、「あのお方に関する実態は何も変わっておらず、考え方・世論を王家が歪めた」のではないか、という説。
どういうことか。
竜の目の言い伝えは、”あのお方”との約束だった。今と変わらず、ごほうびの代わりに未来の光景を見せていた。
原初信仰における”神”は”あのお方”だった。圧倒的な力を持つ彼を軸に、生態系を崩さないような掟を、宗教という形で広めていた。
つまり、全てはあのお方の力だった。その上で、竜の目や原初信仰という「言い伝え」の形で広まっていたわけだが、本来”あのお方”に意志はなかったのではないか、創作だったのではないか、と。
要するに原初信仰の神として祀り上げられてはいたけれど、「狩りで食べなきゃダメだよね」みたいなことは一切思っていなかった。
その上で、王家や人間は約束を結んだ。
”あのお方”の力を利用しつつ、新たな信仰の形を作ろうとしたのだ。
それはつまり、「農園」による支配。彼が農園を認めたから、民は人間を食べられる。貴族が農園を運営するから、鬼は人間を食べられる。
竜や神とは別に、「あのお方」として祭り上げる。
その上で、信仰の対象を、あのお方から極力ずらし、自分たちにも権力をもたせるようにシフトした。そして、原初信仰というものは否定されるようにした。
意図的に昔の宗教を廃れさせ、自分たちの権力・支配をより強固なものにする、ということを王家は狙ってやったのではないかと。
”あのお方”の力が使われてきたことは一切変わっていないが、信仰の対象や鬼の意識を変えたんじゃないかな、というのが今回考えたこと。
こうすると、いろんなことに説明がつく。
まず、竜の目や七つの壁、あのお方が祀られていること。
元々は全て同じで、王家によって考え方を否定された。ならば同じ寺にあるのは不自然ではない。
そして、そこに先生がいることにも違和感がない。
原初信仰はあのお方が否定したように見えるが、原初信仰の神があのお方で、王家が元凶ならばおかしくはない。
そして、それらがすべて廃れているのも、農園というものを絶対とするための王家の政策なら、納得がいくかなと。
また、ソンジュ(や先生)がいまだに原初信仰を信じていることに関しても、大きな矛盾ではない。
神は農園を許したあのお方だったかもしれないが、ソンジュたちが重んじるのは「守るべき道理」であり、「命に敬意を払う」という姿勢だからだ。
以下に結論をまとめた。
結論
今回は鬼の世界における宗教について考えた。
結局、竜の目や原初信仰は何故廃れたのか?
あのお方に関わりの深い、七つの壁が祀られた寺は、何故廃れているのか?
原初信仰を否定したはずのあのお方が祀られている寺に、何故ソンジュの先生がいるのか?
などなど、鬼の宗教体制は曖昧でよくわからないことが多い。
これらの疑問に、何とか説明のつく説はないかを考えた。
ここで考えたのが、
「元々全てはあのお方の力だった。しかし鬼側の解釈によって違うものとされてきた」。という前提。
そしてその上で、「王家が約束によって農園を作り、農園とそれを運営する自分たちに信仰の対象を移した」のではないか、という説。
要するに、原初信仰も、竜の目も、全部あのお方の力だった。
だから、寺ではあのお方、竜の目、七つの壁が祀られていた。全部一緒だったのだから。
その上で、原初信仰では「神が作った命じゃなきゃダメ」という教義があったが、それは創作。あのお方に実はそんな意志はなかった。
だから、あのお方は農園を認めた。
そして、王家は古い宗教を全て弾圧して、農園と貴族を祀り上げた。あのお方も、原初信仰や竜の目とは別の形で祭り上げる。
そうすることによって、古い信仰を歪め、自分たちの都合のいいように王家が目論んだのではないか……ということだ。
長々となってしまったが、要するに「全部あのお方の力で、伝わり方が違っただけ」ならいろんなことに説明がつくな、ということ。
いろんな種類があってややこしかったけど、元は同じで捉え方が違っただけではないかという説だ。
おわりに
もうすぐ配信予定。
こんにちは。
考察面白かったです!信仰の解釈が変わった事とか権力が絡んでるとか、鬼界の宗教改革みたいです。お寺の老鬼がソンジュの先生はもう確定では?あのお寺、参拝者はいないけど管理は行き届いてました。新鮮なお供え物とヴィダ、火も灯ってましたし。もしかしたら先生が管理してるのかも?
復讐の為にも人間を狩るようになってからは、正しい信仰の形は崩れてた気がします。農園が受け入れられたのはそういう背景もあったのかも。それでも300年確立しなかったのは、技術的な面だけでなく一部原初信仰信者の反発もあったのかもしれません。
竜やあのお方については色々な考えが浮かんで定まりませんが、いくつか書いてみます。反論の余地ありまくりですが(-ω-;)
○神的存在=昼と夜?
・お寺進化図→図のてっぺんが昼と夜に見えたため。神=昼と夜から命が作られたという事?
・儀程→ヴィダを金の水と併せて使うと最終的には昼と夜に繋がるので、本当に命を神に返しているのかも。ただコニーでも儀程してるので、養殖物はダメみたいな教義はやはり生態系云々や己を律するためのものかなという感じ。
○竜=神使
竜が神でその体から動植物が生まれたなんてのも考えましたが、神の使いというのもあり。稲荷神社の狐みたいな。
・遺跡→昔は皆が押し寄せた位なので割と容易に竜と繋がれた?今は使えなくなったみたいに書かれてますが、特殊なケースとは言えエマは接触出来たので、完全に機能しなくなったのとは違う気も…あのお方が入口以外からの訪問者をはじくのが原因では?でも古文書より千年前までは使えてたっぽいので、いつから廃れたのかは謎。
○あのお方=シャーマン的存在?
神託とかやってるうちに竜や昼夜に干渉出来る様になり、竜との接触を何処からでも出来るシステムに変えた。結果、遺跡は特別な場所でなくなる。多分竜とコンタクトを取る時も七つの壁を越えないと行けなくなったのでは。昼と夜はあのお方と約束をするだけの場所ではなさそうですし。
○あのお方=寺のあのお方ではない?
繋がりはあるけど同一存在ではない。寺の方のあのお方は初代王とかかなと何となく思い付きで…。
新情報が開示されてるのにまだよく分からない事だらけ…。
>くどうさん
コメントありがとうございます。
◆◆昼と夜◆◆
あ、昼と夜が場所じゃなく存在、というのは面白いですね。
場所と決めつけちゃってましたが、そうじゃない可能性もありそうです。
◆◆あのお方がシャーマン・神託者◆◆
これもありそうですよね。
それが可能なら、信仰の在り方や対象が大きく変化しますから。